モネの晩年の渾身の作
全長6メートルにもおよぶ大きさのこの絵は現在「チューリヒ美術館展」(2014年9月25日~12月15日=東京、2015年1月31日~5月10日=神戸)で日本初公開されています。とりわけ印象的なのは画面全体を覆う水面に映った夕陽ですね。
夕陽に反響した水面は強いエネルギーを獲得し、神秘的な輝きを放っています!これは、当時視力を失いかけていたモネの渾身の作で、そのあまりの絵に対する純粋さに心うたれてしまいます。
この絵はモネ自身の心象風景なのかもしれませんし、希望の灯を失わずに生きていこうという強い信念が水面に映る夕陽として結実したのかもしれません。
「時間の流れとともに多彩な表情を映し出す水面とそこに浮かぶ睡蓮の花の対比の面白さ……。」以前の投稿で、モネの睡蓮をテーマとして扱ったとき、こんな表現を使ったことがありました。
モネは晩年自宅に日本風の池を造り、よくも飽きもせずにと思うくらい睡蓮の絵ばかりを描き続けたのですが、この作品をじっと見ていると、もはや具象とか抽象とかという形式的なジャンルで区分けできるような絵ではないということを痛感するのです。色彩やフォルム、空気感、時間軸までが渾然一体となっており、モネが行きついた最後の境地といっていいかもしれません。
最晩年にこんなにスケールの大きい意欲作を描きあげたということは、モネにとって睡蓮の池は喜怒哀楽を率直に映し出す鏡であり、心の原風景となっていたのかもしれません……。
これほどの大作になると、画集や写真で見るよりも原画を直接ご覧になるほうがいいのは間違いないでしょう。なぜなら、画家の絵に込められた息づかいや微妙な色合いのニュアンス等の絵全体から伝わるメッセージは印刷物とではやはり段違いだからです。
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