明暗を分ける管弦楽組曲
バッハの管弦楽組曲といえば昔から圧倒的に2番と3番が有名で、CDでハイライト盤が組まれる場合はほぼ例外なく2番、3番が選ばれてきたと言っていいでしょう。
2番と3番はバッハの作品全体の中でも演奏される機会が多く、録音が多いことでも有名でした。それに比べると地味で(人気がないとは言いませんが…)不幸な立場にある1番と4番ですが、それではバッハの作品としては不出来な部類なのでしょうか……。
いえいえ決してそんなことはありません。2番のパディヌリや3番のエアのような人気曲こそありませんが、充実した構成と創造的な音楽の展開はバッハの音楽を聴く醍醐味でいっぱいです。
特に1番の序曲は伸びやかで晴朗な響きが快く、希望の芽が段々と膨らんでいくような実感があります。数々の舞曲も新しい試みでいっぱいで、音楽の息吹が全編にみなぎっています。
不人気な1番、4番に光を照らしたゲーベル
1番と4番については2番と3番が素晴らしいリヒターやカザルスがもう一つなのですが、ラインハルト・ゲーベル指揮ムジカ・アンティーク・ケルン(アルヒーフ)の演奏がこれまでのバッハ演奏の常識を覆した素晴らしい演奏です。スピーディーなテンポなのですが、とにかく響きが新鮮でセンス満点!壮重な構えはないのに過不足な感じがまったくありません。
それよりもバッハの音楽には、こんな意味もあったのか、こんな処理の仕方もあったのかと驚くことばかりなのです!
通常だと序曲は壮麗な響きで重厚感たっぷりの演奏スタイルがとられることが一般的なのですが、ゲーベルはそのような常識的なスタイルや音楽の流れにとらわれることは一切ありません。形だけをとれば、とてもバロックスタイルとはほど遠いように思えますし、人間的な温かみがでないように乏しいように感じてしまうでしょう。しかし、バッハの音楽の本質をしっかりと把握しているため、違和感がないのです。
とにかくゲーベルの演奏は影に隠れてしまいがちな管弦楽組曲の1番、4番に市民権を与えたとも言える名演奏ではないでしょうか!
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