最高のエンターティメント性に満ちたオペラ
ヘンデルにとってオペラは後年のオラトリオと同様に、なくてはならない重要なジャンルでした。なぜならヘンデルの雄弁でスケールの大きい音楽スタイルはオペラにピッタリだからです。 「リナルド」はヘンデルのオペラの中ではかなり初期の作品ですが、イタリア修行中に習得したオペラの形式や音楽技法はヘンデル自身の中で完全に熟れています。しかも、音楽そのものはヘンデルでしか作り得ない第一級のエンターテイメントとして結実しているのが音楽を聴くとよくお分かりになることでしょう!
このオペラは劇中に様々な仕掛けが施されていて、誰が聴いても飽きることなく音楽に浸れるのです。イマジネーションを広げる音色の豊かさ、輝かしくしっかりとしたオーケストレーション、可憐で懐かしい響き……。とにかくオペラの原点とも言うべきワクワク感でいっぱいなのです! 序曲もアリアもシンフォニアも新鮮な驚きや感動に満ちており、どこをとっても最高のエンターティメント性に満ちていることが凄いところでしょう。
充実したアリアの数々
「リナルド」はヘンデルが満を持してイギリス音楽界にデビューを飾ったときの作品でした! この作品でヘンデルは大成功を収め、その後彼は終生に渡ってイギリスを活動の拠点としたのです。
「リナルド」は登場人物のそれぞれのアリアが充実していて、1曲だけ取り出したとしても充分に鑑賞に耐えられるナンバー揃いと言っていいでしょう。特にアルミレーナが歌う「涙の流れるままに」はセルセの「オンブラ・マイフ」と同じように、単独で歌われることが多い有名なアリアです。朗々とした響きやはるか彼方へ向かおうとする息の長い旋律線は悠久の時を伝えるかのようでとても感動的です! 小鳥の囀りを模した管弦楽が印象的なアリア「歌を歌う小鳥たち」はピッコロとフルートの天上のような響きがアルミレーナの清純無垢な雰囲気を見事に表出していると言ってもいいでしょう! 深い哀しみをしみじみと歌うリナルドの「いとしい恋人よ」も一度聴いたら忘れられない名旋律です。その他、印象に残るアリアを挙げたらキリがないですね……。
音楽家を魅了してやまない音楽!
「リナルド」はヘンデルの幾多のオペラの中でも最も演奏回数やレコーディングが多い作品です。最近に限っても数多くの古楽系の指揮者がレコーディングをしていることを思えば、いかにこの作品が多くの人たちに愛されているかがお分かりいただけるのではないでしょうか!
現在のところ、CDのお勧めはルネ・ヤーコプス指揮フライブルク・バロック・オーケストラ、ヴィヴィカ・ジュノー(MS)、ミア・パーション(S)らによるものが素晴らしい出来栄えです。とにかく聴いていて楽しく、メリハリが利き、ヘンデルらしい輝かしい響きも随所に出てまいります!前述の「涙の流れるままに」はパーションのゆったりした歌唱が素晴らしく、リナルド役ジュノーの超絶的な名唱も忘れがたいですね。
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