2011年6月21日火曜日

ラヴェル 古風なメヌエット






幻想的でファンタジックな香り

 「ラヴェルのピアノ曲って何から聴いたらいいんだろう?」と思われている方は結構多いのではないでしょうか?管弦楽曲であれば「ボレロ」、「ダフニスとクロエ」、「マ・メール・ロワ」のように誰もが親しめる曲があるのに、ピアノ曲となると意外に入門にふさわしい曲ってないんですね。かろうじて「亡き王女のためのパヴァーヌ」が美しいメロディと気品ある雰囲気で親しみやすいというところでしょうか……。

 しかしよく探してみたら1曲だけありました。「古風なメヌエット」です。演奏時間もせいぜい7分から8分でしょうか?タイトルから推測するとルネッサンスかバロック調の雰囲気を持つソナタのように思えます。ラモーやコレルリ、クープラン、シャルパンティエのように優雅で洒落た味わいを持つ曲なのでしょうか?

 実際に聴いてみるとバッハのパルティータのような印象的なテーマで始まる第1主題で始まり、バロック的なリズムやテンポで曲は流れていきます。しかし体裁はバロック的ですが、曲の情緒や個性はまぎれもなくラヴェルそのもので、次第に幻想的でファンタジックな香りが立ち上ってゆきます。特に美しいのは中間部の嬰ヘ長調のトリオではないでしょうか。ゆったりとした時間の流れの中で美しく描かれる詩情。さまざまな回想の情景が現れ、憧れ、夢、静寂のような心地いい瞬間がまどろむように流れていくのです!!……。
 そして最高に盛り上がったフレーズで曲は停止し、まもなく最初の第1主題のテーマが再現され、現実に引き戻されるように曲は終わっていきます。

 この曲で特に印象に残っているのはサンソン・フランソワのEMI録音盤です。特に第1部嬰ヘ短調、第2部嬰ヘ長調、第3部嬰ヘ短調の弾き分けがはっきりしており、明確な強い主張が感じられます。一音ごとにドラマがあり、その生き生きとした表現力と詩情の豊かさに圧倒されます。7分少々のこの曲が何と短く感じられることか!特に第2部の嬰ヘ長調は時間の流れを忘れたかのような陶酔感が美しく、その音域の自在な広さに唖然とします。




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