2011年6月18日土曜日

ブルックナー 交響曲第5番変ロ長調












風格と推進力に富んだ傑作!

 今、最もライブで聴いてみたい作品!それはブルックナーの交響曲第5番です。この曲はどこまでも渋く、曲中も難解なテーマが多いため一般的には決して馴染みやすい作品ではありません。気軽に口ずさめるようなフレーズもあまり見当たりませんし、転調も激しく、この音楽の真意を理解するのに苦労するくらいです。それでもこの曲に強く惹かれるのは、おそらく理屈では説明し難い何かがあるからなのです。

  この曲の一番の魅力はちょっとやそっとではビクともしそうにない骨太で質実剛健な作風にあります!しかも曲が全体的によく練られており、終始あわてることなく地にしっかりと足がついた風格と推進力が印象的なのです。何度耳にしても飽きることが無く、浮ついたところが一切無い音楽!この音楽を一度好きになると終世その魅力から離れられなくなるファンが多いというのも分かるような気がします。


 ブルックナーを堪能するにはある程度音楽的な資質が必要とも言われています。その資質とは「既成概念を持たない」ことや、「素直な心の状態を保つ」ことが最も大きいかもしれません。つまり、流れる音楽に純粋に心と耳を開放するということがこのような長大な曲を聴く上での最大のポイントになるのではないでしょうか。
 5番で次々と現れる抽象的なテーマは一見とっつきにくそうですが、ただ単に難解なのではありません。いぶし銀的な魅力を持ち、根底には強靭な精神性を内包しているのです。


ライブでこそ、曲の凄さが実感できる

 人は想像を絶する巨大な建造物に接したり、大自然の威容を目の当たりにする時、ただ圧倒され畏敬の念を抱く以外になす術がないということがよくあります。この曲の第4楽章などはまさにそうでしょう! 聳え立つ大聖堂のように力強いコラールが連続して現れ、ライブなどではその凄さを体感できる楽章だと思います。金管楽曲やティンパニが活躍し壮大なフィナーレを迎えるまでの間、胸は高鳴るばかりで精神的な充足度や演奏効果は頂点に達します!

 この作品は巨匠と言われる指揮者たちがこぞって録音しています。古くはクナパーツブッシュとウィーンフィル、マタチッチとチェコフィル、ヨッフムとアムステルダムコンセルトへボウ管弦楽団、チェリビダッケとミュンヘンフィル、朝比奈隆と大阪フィルらが名演奏を繰り広げてきました。
 その中で録音も含めて最も素晴らしいのはギュンター・ヴァントがベルリンフィルと組んだ演奏になるかと思います。ヴァントの演奏は自信に溢れ、どこをとっても不足のない充実した響きを引き出しています。しかも力づくで付けられた表情ではなく、楽器の有機的で意味深い響きが連続するのです。それはこの曲の内面性を生かしたもので、随所に瞑想や祈りの感情が漂いこの曲に膨らみを持たせているのです。





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