真摯な作曲姿勢が結実した魅力作
メンデルスゾーンは作品全体に漂う品格や素直さが最高に魅力として生きている作曲家だと思います。管弦楽曲の「真夏の夜の夢」や「無言歌」、「ヴァイオリン協奏曲」等はその最たるものではないでしょうか。メロディに西洋音楽の正統派の流れをそのまま受け継いだようなクセの無さが秀逸です。
もちろん、その品格や素直さが曲によっては、「味が薄い」「深みがない」といった批判の対象になったりすることもあるわけです。けれども、少なくとも声楽曲やオラトリオ等に関しては、品格や素直さがあらゆる面でプラスに作用していると言ってもいいのではないでしょうか。
ユダヤ人哲学者の父を持ち、自身プロテスタントの要職に就いていたメンデルスゾーンがバッハのカンタータや声楽曲に関心を払うのは当然の成り行きで、その敬意や愛情、研究の成果は自身の音楽人生にも大きな影響を与えたのでした。
たとえば、一般の人があまり注目しない隠れた名作、傑作を世に知らしめした功績ははかり知れません。おそらく彼はそのような作品を多くの人に伝えることをライフワークと捉えていたのでしょう。バッハのマタイ受難曲もそのひとつで、いわゆる演奏家が聴衆を前にして過去の作曲家の名曲を演奏するクラシック音楽の原形を確立したのもメンデルスゾーンが最初だったのです。
そんなメンデルスゾーンが「交響曲的カンタータ」という位置づけで残した交響曲第2番「讃歌」は前半が管弦楽、中後半が声楽を伴うカンタータのような形式になった珍しい作品です。
この作品で素晴らしいのは声楽が決して付録ではなく、作品を構成する重要なポイントになっていることです。演奏が良ければ、オーケストラと声楽が一体となり、身震いするような共鳴感と感動を体験することもできるでしょう。
メンデルスゾーン自身の「パウロ」や「エリア」の間にはさまれた声楽作品として、彼の真摯な作曲姿勢が結実した魅力がいっぱい詰まった作品です。
演奏としてお勧めできるのは、クルト・マズアがライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団と合唱団を指揮したものが、充実した響きとシュライヤー、ボニー等の素直な安定した歌唱を中心にじっくりと聴かせてくれます。
最近の録音でもう1枚、同じライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団と合唱団を指揮したシャイーの演奏もオーケストラの響きを最大限に生かし、立体的で奥行きのある名演奏を成し遂げました。
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