2012年5月11日金曜日

ルーヴル – DNP ミュージアムラボ



新しいスタイルの芸術体験



 ミュージアムラボは、パリのルーヴル美術館とDNP(大日本印刷)による共同プロジェクトとしてスタートした、一歩踏み込んだ新しい時代の絵画鑑賞を提案するアートスペースです。
 ここはマルチメディアコンテンツにより、さまざまな切り口からルーヴル美術館の作品をじっくり鑑賞する展示をしているところがユニークで新鮮ですね! 
 たとえば、普通の展覧会ではその人の感性や知識で絵を見る場合がほとんどですが、ミュージアムラボでは実際に絵をシュミレーションしたり、絵の空間に入ってみたり、情報を引き出したり……。と五感をフルに活用して絵を観察する体験ができます! その結果、生きた絵の鑑賞体験が絵を見る面白さを引き出してくれるのではないでしょうか! こんな見方もあるのかと思われる方も多いでしょう。
 ただし観覧される場合はスケジュールと予約の空き状況の確認が必要です。 このミュージアムラボは開館時間が限られています。平日は金曜日の夜(18:00~21:00)と土、日(10:00~18:00)のみの開館です。また予約が必要ですので、くれぐれもご注意を!予約はホームページから可能です。


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 美術鑑賞は、ただ作品に視線を向けるというだけではなく、見る、知る、感じる、考えるというプロセスを通して視点を豊かしにし、想像力と感受性をもってその意味を読み解く行為です。
 見る人にさまざまな発見や刺激、感動をもたらし、新しい視点をひらく体験。この、人と作品との間にコミュニケーションが立ち上がるような豊かな関係こそが、ミュージアムラボがかなえたい美術鑑賞のかたちです。 
 ミュージアムラボは以下のテーマを探求し活動の中に活かすことによって、人と作品がより豊かに関係を取り結ぶ手助けをしていきたいと考えています。 

ミュージアムラボの3つの探求テーマ

1.見る
意識を持って目の前の作品を見る力を、来館者自らが育てていく学びの仕組みを開発します。

2.知る
作品のよりよい理解を助ける、伝えたい知識の内容にふさわしい情報提供のあり方を探求します。

3.感じる
作品を鑑賞する楽しさが実感として残るような体験の設計と、その体験がその後の美術鑑賞に活かされていく方法論を提案します。(公式サイトより)


2012年5月8日火曜日

「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」庄司紗矢香のショスタコーヴィチ




心からの共感を持って弾かれた庄司紗矢香のショスタコーヴィチ


今年発売された庄司紗矢香のショスタコーヴィチヴァイオリン協奏曲1番、2番のCD


 先日、有楽町の国際フォーラムで開催されていたラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャパン「熱狂の日」コンサートに行ってきました! このコンサートのいいところは普段着で気軽に出かけられるという事や低料金で良質のコンサートが楽しめるところではないでしょうか。

今年のイベントも前々から気にはなっていたものの、とかくゴールデンウイーク期間だけあって人、人、人で無料コンサートはもちろん、有料コンサートも立錐の余地がないのでは……!?というイメージが頭の中を駆け巡りなかなか足が向きませんでした。

 ところがイベントも2日目に突入した5月4日の午後になってから、無性にこのコンサートに行きたくなってしまったのです。そこでいろいろ調べた結果、4日のプログラムの中に19時45分からショスタコーヴィチ・ヴァイオリン協奏曲第1番の演奏があるという文字を発見したのです。 しかも、ヴァイオリンが庄司紗矢香さんだというではないですか!「これは是非聴きに行くしかない!」と直感的に思ったものの電話受付は既に終了……。 やはり諦めるしかないかなと思いながら、ダメもとでチケットぴあの購入サイトを見たら、何と空席があるではありませんか! もちろん喜び勇んで当日券を購入したのでした。
庄司さんと言えば、先日、この曲を同じ指揮者、オーケストラでCDリリースをしたばかりで、その自信の程が伺えるようです。


   この曲は交響曲のような重厚感と楽章ごとに変化に富んだ表情が連続するため簡単な曲でないことは間違いありません。後日、改めて作品紹介で詳述したいと思いますが、気の抜けない難曲です。 独奏者は猛烈な集中力と造形感覚、曲の真実を掘り起こす洞察力、表現力といったさまざまな内容が要求されるのです! そういう意味でも次々とやってくる哲学的で情念的な思索の絡みを庄司さんがどう表現するのか、とても楽しみでした! 

   第1楽章は抑制の利いた静かに語りかける奏法が印象的でした。不安や焦燥に駆られ半音階を上下動するような独特の旋律を決して騒ぎ立てず、深い瞑想のように描き出す表現力には驚かされました。第2楽章も鋭いリズムのアタックや気分の変化を見事に表していきます。
けれども何と言っても素晴らしかったのは第3楽章でしょう!深い悲しみに彩られた鎮魂歌のような美しいパッサカリアを庄司さんは心からの共感を持って弾いてくれました。その感動ははかり知れず、この曲の持つ奥行きを充分に実感させてくれる演奏だったのです。またその後の長大なカデンツァも深く、音の存在感があり素晴らしい! 切れ目なく続く弟4楽章のフィナーレはエネルギーを放射するような確信に満ち、自在な演奏に思わず引き込まれました。

テクニック云々ではなく、真剣に音楽に向き合っている庄司さんの姿に演奏家としての大切な何かを見せられた気がします。今後も演奏家としてさらに円熟していくことは間違いないでしょうし、音楽界にはなくてはならない存在になる日も遠くないかもしれません!



2012年5月3日木曜日

ブルックナー 交響曲第8番ハ短調




ブルックナーの演奏を手中に収めたシューリヒトの名演





最近この曲は演奏会のプログラムに組まれることがとても多いようです。交響曲の定番として一躍人気を博してきた感じですね! 人気の理由として弦楽器はもちろんのこと、金管楽器、木管楽器が大活躍して、さまざまなシーンで印象的な旋律を奏でることが大きいし、それによって曲に豊かな表情を与えられることがあげられるでしょう。特に金管楽器は弦楽器と同等かそれ以上の存在感を示しており、骨太で強靭な曲の構造、宇宙的な意志の表出等の性格付けに大きく貢献しているのです。

もちろん聴き所も多く、聴き手は長い曲にもかかわらず最後まで集中力を切らさず堪能できるのは魅力的なフレーズや響きが有機的につながっているからなのです。
ブルックナーの8番は彼が全曲を完成させた最後の交響曲で、未完成の9番のような孤高の魂や抽象的な深化こそありませんが、曲の内容、充実度、精神性、オリジナリティ、そのどれをとってもブルックナー、いや交響曲史上最高の作品と言ってもいいかもしれません。

なんと言っても驚くのはブルックナーの日常的なモチーフに対する感動の深さと泉のようにあふれる創作力でしょう。ブルックナーは交響曲でかつて私たちがあまり耳にしたことがないような宇宙的で神秘的な旋律を生み出しました。一見武骨で無意味に聴こえる音の羅列も、実はとても意味があり、何度も聴き込むほどに感動と深い余韻を実感させてくれるのです。メロディラインは決して複雑にせず、息の長い音型と繊細な弦の刻み、虚飾を一切排した純粋無垢な響きと構成で素晴らしい浄福の世界を描いて見せたのです!

8番は終始、内省的な彩りに覆われ、心の深いところに焦点を定めています。特に第1楽章は悲惨な情景が現れ、重々しく打ちひしがれた心を携えて苦悩する人間を彷彿とさせます。第2楽章も曲の本質的な部分においては、絶えず魂の安住の地を求め、もがき苦しみながら彷徨する旅人の姿を想わせます。 しかし、いたるところで澄んだ空気や爽やかな風、どこまでも抜けるような青空、広大なアルプスのような自然がバックボーンとなり、心を満たしてくれるのです! したがって重苦しい曲調であっても絶えず清浄な気流が流れ、絶望の淵に追いやられそうな人間を暖かく包み込んでくれるのです! 

第3楽章から第4楽章にかけては曲の核心の部分にあたり、次々と印象的な名旋律が現れます! 第3楽章のアダージョは神秘的な第1主題で始まります。第1主題のテーマは失意と悲しみを慈しむ心洗われる音楽といっていいでしょう。
そこにチェロを主体にした美しい第2主題が現れます。それは歓喜や慰め、悲しみ、祈りが入り混じったような一瞬で心を捉えて離さない名旋律と言っていいかもしれません。きっとこの旋律には私たちの心の奥底に眠っている美しい記憶の断片を引き出す何かがあるのでしょう!
その後金管楽器の壮麗な響きが虹のような輝きを生み出し、最高潮に達したところで神の栄光が地上に出現するのです! 第3楽章の終結部で潤いに満ちた天国的な情緒の中で名残惜しそうに終了するのが何とも印象的ですね。


第4楽章は冒頭の強い意志に導き出された金管楽器のファンファーレがただならぬ心の嵐を呼び起こします。息をつく間もなく次々と意味深いメロディが現れ、回想、瞑想、慟哭、嘆き等のさまざまなエピソードに満ちた深遠な世界を表出していくのです! そして終結部では痛ましい情景の表出、破滅的な合奏と共に小鳥が寂しくさえずります。その後、悲しみを抱えながら足どりを再開しますが、やがて神の栄光を顕すかのように希望の光と無限のエネルギーが降り注がれ、充溢した状況のうちに曲は終了するのです!

この8番は前回、クナパーツブッシュがミュンヘンフィルを振ったスタジオ録音盤をおすすめしました。もちろん画期的な大名演に違いないのですが、多分にワーグナー的な色彩感覚の強い演奏であることは否めません。そこで今回は純正のブルックナー演奏として同時代録音(1963年)のカール・シューリヒト&ウイーンフィル(EMI)の演奏をとりあげたいと思います!

シューリヒトの演奏はテンポが速く、かなり積極的に表情を付けているので、「どこが純正のブルックナーか」とおっしゃる方も当然おられるでしょう。 しかしこの曲に深い共感を寄せるシューリヒトの演奏はやはり格別で、ブルックナーの演奏スタイルを完全に手中に収めていることを痛感します! ウイーンフィルの演奏はやはり素晴らしく、楽器の音色の豊かな色合い、美しさ、存在感すべてにおいて満点です! 特に弦の刻みは決して同じ表情の羅列ではなく、絶妙に変化しながら崇高で豊かな色付けを全体に施していくのです!
金管楽器の雄弁なこともこの上ありません。時には「明るすぎるのでは」とか、「軽すぎるのでは」という異論も出てくるのでしょうが、これこそブルックナー本来の無垢な響きを最大限に生かしたものと言えるでしょう。
シューリヒトの表現は決して音色が暗くなったり、重くなったりすることはなく、終始快い透明感と気品を湛えながらブルックナーの音楽の本質を解き明かしてくれるのです!


2012年4月27日金曜日

ヘンデル オラトリオ「ユダス・マカベウス」









 このオラトリオはヘンデルのオラトリオの中では「メサイア」に次いでポピュラーな作品ではないでしょうか。ポピュラーというのも決して作品自体がポピュラーなのではなく、ある特定の曲が特別に有名だからなのです。
 その曲は日本のスポーツの祭典や大会の表彰式でもよく使われる「見よ勇者は帰る」という勇壮なヘンデルらしい曲です。この曲は表彰式定番の曲なのでおそらく大抵の人は耳にしたことがあるに違いありません! ベートーヴェンもこの曲を題材に「マカベウスの主題による変奏曲」という作品を残したのは有名な話ですよね。

 「ユダス・マカベウス」はマカバイ記(聖書外典)のユダス・マカバイを描いています。彼はセレウコス朝シリアの圧政に苦しむイスラエル民族を解放したイスラエルの英雄だったのでした。

 内容は当然のごとく戦闘的なモチーフの展開が多くなり、演奏や演出効果によっては同じような場面の繰り返しになってしまいかねません。概してストーリーもそれぞれの人物像の表現が意外にあっさり描かれており、聴きかたによっては「退屈だ」とか「単調だ」と感じてしまう方がいらっしゃっても決して不思議ではないでしょう。 しかし音楽的にはいささかも薄っぺらな内容ではなく、全体的に不屈の信念と神への賛美を描いたとても格調の高い骨格のしっかりした傑作と言えると思います。

 特に合唱の数はヘンデルのオラトリオの中で「エジプトのイスラエル人」、「メサイア」に次いで多く、そのどれもが重要な意味を持つ内容豊富な曲ばかりです。
ヘンデルは劇中のさまざまな合唱でこの英雄の進撃に対して快哉を叫ぶ民の声や圧政に打ちひしがれる民の哀しみを雄大なドラマとして表現し尽くしています! 全体的になだらかな曲線を描きながらスケール豊かに歌われる数々の合唱は、時には懐かしく響き、遙かな永遠への確信を抱いて歌う神への讃歌となっていくのです!
 デュエットやその間を縫う多くのアリアも気品に溢れ、優雅な味わいを醸し出し魅力も満載です!

 合唱で忘れ難いナンバーは神の偉大さを称え、輝かしく晴朗に歌うフィナーレの「ハレルヤアーメン!」、神への賛美を大河の流れのように優美に綴った「シオンはこうべ頭を上げよ Sion now her head shall raiseセレウコス朝の将軍を撃破し勝利を喜ぶ凱旋の合唱「神に向かって歌え Sing unto God」、誓いと信仰告白をフーガのリズムによって表現した「もう二度と跪きはしまい  O never, never bow we down」等多数ありますが、いずれ劣らぬ素晴らしい音楽であることは間違いありません。


  こうして見ると明確なポリシーを持ち、一貫したテーマのもとに音楽を次々と生み出し曲を構成するヘンデルの才能や手腕はやはり瞠目に値します!

  さて演奏のほうですが、推薦盤としておすすめできるCDが意外に少ないのに驚きました。戦闘的な要素を持ちながら叙情的な雰囲気を多分に持つこの音楽を雄弁に語るのはやはり難しいのかと思ってしまいます……。ガーディナー、ホグウッド、アーノンクール、ピノック等、他のオラトリオを積極的に取り上げてきた古楽の大家たちもこの曲はなぜか取り上げていません。

  そんな中でとりあえず満足できる録音としてあげたいのがレオナルド・ガルシア・アラルコン指揮ナミュール室内合唱団およびレザグレマンのCDです。とにかく音楽に勢いがあり、合唱も非常にのびやかで音楽に強く共感していることが端々から伝わってきます! そのことが音楽に陰影を与え豊かな表現を生み出しているのでしょう。タイトルロールを担当したテノールの櫻田亮は類い稀な美声と表現力で最高の存在感を発揮しています!
 
 もう1枚ユルゲン・ブッダイ指揮マウルブロン室内合唱団およびムジカ・フロレアの演奏はやや窮屈な感じはするものの、上滑りのしない落ち着いた深い味わいが印象的で、合唱も手堅く充実しています。




2012年4月21日土曜日

僕達急行ーA列車で行こう



いい味出してる映画「僕達急行ーA列車で行こう」






 最近3D映画が急増してきました。映画館に足を運ばせる人が減る傾向に歯止めをかけるためなのかもしれませんが、決して気分がいいものではありませんね…。なにしろ3Dメガネを通した映像が映画の感動の質を高めるものであれば大歓迎なのですが、そうでもありません。映像も無理矢理3Dにした感が強くて興ざめなのです。
 もしも映画の内容を3Dでカバーしようという動きがあるとしたら本末転倒もいいところでしょう。

 しかし、それ以上に残念で問題なのは3Dメガネのかけごこちの悪さです。顔が圧迫されるような感覚はとても辛く、最後までかけ通すことすら至難の技です。今後もどうしても3D映画を作るというなら、このメガネだけは何とかして頂きたいものです。

 そんな中、生粋の(?)2D映画を観てきました。それは先日亡くなった森田芳光監督の遺作、「僕達急行ーA列車で行こう」です。鉄道オタクの主演の2人(松山ケンイチ、瑛太)が偶然の出会いで意気投合するという話です。他愛の無い話なのですが、その語り口やストーリーの展開は軽妙洒脱でテンポが良く、まったく肩が凝りません。それでいてユーモアがいたるところに散りばめられ、何とも言えない空気感を出しているのです!何だか古き良き時代の映画を見ている感覚があるような無いような…!?。

 登場人物はみな一癖も二癖もあるような曲者ばかりで、不思議と言えば不思議な映画です。けれども、「どうだ」と言わんばかりの作為的な自惚れや演出のようなものが感じられず、その分肩の力を抜いてリラックスした状態で観ることができるのがとてもうれしいのです!
 深刻なストーリーの映画、CGバリバリの映画、内容がぎっしり詰まった映画を見疲れたあなた! この映画を観てください。案外いい気分転換にもなり、時間を忘れて楽しめるかもしれませんよ。


2012年4月17日火曜日

ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18








  胸を熱くさせる郷愁とロマン…。忘れていたものを蘇らせてくれる叙情性。ラフマニノフの音楽を聴くと、いつもこのようなイメージが浮かんできます。その作風は彼が活躍した時代の中では、確かにロマン的な情緒が強いのですが、それこそがラフマニノフのラフマニノフたる所以なのでしょう!
 映画の中でもしばしば使われる彼の哀愁をおびたメロディの数々は、さまざまな場面で忘れ難い記憶を与えてくれるのです。

 ところでピアノ協奏曲第2番は昔から非常に人気の高い曲であることは皆さんご承知の通りだと思いますし、それは現在もまったく変わっていません。何と言ってもメロディの宝庫ですし、ピアニストのヴィルトゥオーゾ的な演奏効果も充分に期待できる曲ということが大きいのでしょう! そのような意味でもこの曲はCDで聴くよりも演奏会で生の演奏を聴いた方がずっと感動的かもしれません! ごひいきのピアニストがこの協奏曲を弾く機会がありましたら、ぜひ実演に接してみられることをお勧めしたいですネ!

 この曲で傑作なのは何と言っても第1楽章でしょう!冒頭では大地の底から唸りを上げるようなピアノの和音に始まり、それに続く壮大で哀愁に満ちた第1主題が心の嵐やロシアの厳しい自然を想わせ曲を盛り上げます。静寂感を湛えた第2主題の甘く切ないメロディも非常に印象的です。曲調はドラマティックなのですが、メロディラインはとても親しみやすく、この曲に接した人ならば誰もが第1主題、第2主題のテーマを容易に口ずさめるのではないでしょうか。

 第2楽章の物思いに耽るような情緒も素晴らしく、おそらく1度聴くと忘れられない音楽になるでしょう!ピアノの三連音符から静かに導き出される心の癒し、なぜか懐かしく郷愁に満ちたメロディ…。時間の概念の枠が取り外されたような心に染みる音楽です。テーマはあるようでないような不思議な魅力を持った曲調なのですが、こういう音楽を書かせたらラフマニノフは天下一品です!

 第3楽章も第1楽章のように壮大で華やか、叙情的なメロディが次々と現れ、心と耳に強く語りかけてきます!ピアノと管弦楽は次第に力強く合奏し、やがて圧倒的なフィナーレを迎えるのです。

 演奏はエレーヌ・グリモーがピアノを担当したアシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団(テルデック)の演奏が素晴らしいできばえです!グリモーのピアノはニュアンス豊かでありながら、力強い表現や停滞しないピアニズムにも優れ、ラフマニノフの音楽の魅力を最大限に引き出しています。また、アシュケナージの指揮も情緒たっぷりでスケール豊かです。しかもドラマティックな表現や色彩感にも溢れ、グリモーのピアノを実にうまくサポートしています。




2012年4月11日水曜日

原弘と東京国立近代美術館



《バウハウス展》 1971年


 この展覧会は2月から開催されていますので、もう2か月が経過しています。「今さらどうして?」と言われそうですが、デザイン関係に携わる者としてはどうしてもこの展覧会は無視できないのであえて取り上げさせていただきました…。
 原弘(はら・ひろむ1903〜1986)と言えば亀倉雄策、早川良雄らと共に装幀やポスター、パッケージ等で日本のグラフィックデザイン界をリードしてきた人です。
オーソドックスでありながら、時代を先取りをする斬新なデザイン!洗練された感性!既に昭和初期にそのずば抜けた感性はさまざまな商品イメージに反映されていたのでした。 
 これは日本デザイン界の巨星と呼ぶに相応しい原弘の偉業を振り返る貴重な展覧会といえるでしょう。





原弘と東京国立近代美術館
──デザインワークを通して見えてくるもの

 原弘(はらひろむ)(1903-1986)は、国立近代美術館が京橋に開館した1952(昭和27)年から1975(昭和50)年まで、じつに23年間にわたって、当館の展覧会ポスターをほぼ一貫して手がけていました。原弘が当館の展覧会のためにデザインした展覧会ポスターはおよそ200点を数え、戦後の原弘の仕事の重要な一角を占めています。原弘は、ポスター以外にも、招待状、展覧会カタログの表紙、機関誌『現代の眼』など印刷物のデザインを手がけており、いわば当館専属のアートディレクターとしての役割を果たしていたといえます。...今回の展覧会では、原弘の国立近代美術館のためのポスターの仕事をまとめて紹介するとともに、戦前期の代表作であるパリ万国博覧会(1937年)の写真壁画や対外宣伝誌『FRONT』、そして、戦後のブックデザインなどもあわせて展示し、そこに流れる原弘デザインの理念を探ります。(美術館サイトより)

会場    東京国立近代美術館 
      東京都千代田区北の丸公園3-1
会期    2012年2月3日(金)~5月6日(日)
入場料   一般=420(210)円
      大学生=130(70)円
      *( )内は20人以上の団体料金
      *高校生以下、18歳未満、65歳以上は無料
      *障害者とその介護者1名は無料(要障害者手帳)
休館日   月曜日(ただし、3月19日、3月26日、4月2日、4月30日は開館)
開館時間  10:00~17:00(金曜日は20時まで開館)
      *入館は閉館の30分前まで
問い合わせ tel. 03-5777-8600(ハローダイヤル)
主催    東京国立近代美術館