2012年5月8日火曜日

「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」庄司紗矢香のショスタコーヴィチ




心からの共感を持って弾かれた庄司紗矢香のショスタコーヴィチ


今年発売された庄司紗矢香のショスタコーヴィチヴァイオリン協奏曲1番、2番のCD


 先日、有楽町の国際フォーラムで開催されていたラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャパン「熱狂の日」コンサートに行ってきました! このコンサートのいいところは普段着で気軽に出かけられるという事や低料金で良質のコンサートが楽しめるところではないでしょうか。

今年のイベントも前々から気にはなっていたものの、とかくゴールデンウイーク期間だけあって人、人、人で無料コンサートはもちろん、有料コンサートも立錐の余地がないのでは……!?というイメージが頭の中を駆け巡りなかなか足が向きませんでした。

 ところがイベントも2日目に突入した5月4日の午後になってから、無性にこのコンサートに行きたくなってしまったのです。そこでいろいろ調べた結果、4日のプログラムの中に19時45分からショスタコーヴィチ・ヴァイオリン協奏曲第1番の演奏があるという文字を発見したのです。 しかも、ヴァイオリンが庄司紗矢香さんだというではないですか!「これは是非聴きに行くしかない!」と直感的に思ったものの電話受付は既に終了……。 やはり諦めるしかないかなと思いながら、ダメもとでチケットぴあの購入サイトを見たら、何と空席があるではありませんか! もちろん喜び勇んで当日券を購入したのでした。
庄司さんと言えば、先日、この曲を同じ指揮者、オーケストラでCDリリースをしたばかりで、その自信の程が伺えるようです。


   この曲は交響曲のような重厚感と楽章ごとに変化に富んだ表情が連続するため簡単な曲でないことは間違いありません。後日、改めて作品紹介で詳述したいと思いますが、気の抜けない難曲です。 独奏者は猛烈な集中力と造形感覚、曲の真実を掘り起こす洞察力、表現力といったさまざまな内容が要求されるのです! そういう意味でも次々とやってくる哲学的で情念的な思索の絡みを庄司さんがどう表現するのか、とても楽しみでした! 

   第1楽章は抑制の利いた静かに語りかける奏法が印象的でした。不安や焦燥に駆られ半音階を上下動するような独特の旋律を決して騒ぎ立てず、深い瞑想のように描き出す表現力には驚かされました。第2楽章も鋭いリズムのアタックや気分の変化を見事に表していきます。
けれども何と言っても素晴らしかったのは第3楽章でしょう!深い悲しみに彩られた鎮魂歌のような美しいパッサカリアを庄司さんは心からの共感を持って弾いてくれました。その感動ははかり知れず、この曲の持つ奥行きを充分に実感させてくれる演奏だったのです。またその後の長大なカデンツァも深く、音の存在感があり素晴らしい! 切れ目なく続く弟4楽章のフィナーレはエネルギーを放射するような確信に満ち、自在な演奏に思わず引き込まれました。

テクニック云々ではなく、真剣に音楽に向き合っている庄司さんの姿に演奏家としての大切な何かを見せられた気がします。今後も演奏家としてさらに円熟していくことは間違いないでしょうし、音楽界にはなくてはならない存在になる日も遠くないかもしれません!



0 件のコメント: