2017年8月30日水曜日

注目のメサイア演奏








最もオーソドックスで
最も音楽的なメサイア

今回も前回のホグウッド盤に引き続き、ヘンデル=メサイアの名演についてお話したいと思います。

まず注目したいのが、ダイクストラ&バイエルン放送合唱団、B'ROCK他のCDです。演奏、合唱、ソリストの歌声等、どれをとっても高い次元でまとめられ、しかも演奏が喜びに溢れていることが伝わってきます。

自然と胸が高鳴っていく感覚というのはこのような演奏を指して言うのでしょう。やはりヘンデルの音楽には愉しさや生き生きとした感動、作品への深い共感が必要不可欠なことがよく分かります。
ソリストも「この人が凄い!」という飛び抜けた存在こそいませんか、皆、音楽性が優れているし、メサイアをよく知っていますね。

また、合唱はオリジナル楽器演奏によくあるソプラノを前面に据えて透明感を押し出した演奏とは違い、ソプラノ、アルト、テノール、バス、各声部がそれぞれの強さと主張を持っていて、豊かさや立体感を兼ね備えたハーモニーになっているのです!

ダイクストラのオリジナリティ溢れる指揮や豊かな音楽性にも正直驚きました。もしかしたら、今後ヘンデルのオラトリオでわくわくする演奏を届けてくれるのはこの人かもしれません……。








ミンコフスキ
面目躍如のメサイア

もう一枚はミンコフスキのメサイア(アルヒーフ)です。発売当時、メサイアらしくない演奏だ!?とか、過激だとか……、あまりよろしくない評価を受けてきました。
でも本当にそうなのでしょうか?

改めて聴いてみるとこの演奏に込めたミンコフスキの並々ならぬ思いが伝わってきます。それはメサイアの音符から生きたドラマや精神性を描き出そうという強い信念なのです。それならメサイアの本質や透明感のある響きから遠ざかってしまうのでは……、と思われる方もいらっしゃるでしょうが、決してそうではありません。

全体的にこのメサイアの合唱は強いダイナミズムに貫かれていて、一気呵成に進められていくし、求心力があります。けれども威圧的にはなってないし、とことん突き詰めた深い表現が、さすがミンコフスキと思わせます。

たとえば、第二部の「見よ、世の罪を取り除く神の子羊」の 合唱は他の演奏からは聴くことができない苦悩や孤独がひたひたと伝わってきます。
また、ドーソンやエインズリー、アサワらの歌はいずれも心の歌を強く印象づけますし、存在感充分です。

ただ納得できないのは「ほふられた子羊たちは~アーメンコーラス」で結ばれる最後の大規模な合唱の部分です……。深い内容を引き出そうとしたのかもしれませんが、これだけはちょっといただけません。とにかく最後の最後まで苦悩を引きずっているような感じがしてくどいのです……。

「終わりよければすべて良し」とはよく言いますが、よりによって最後の感動的で大事なコーラスだけに、これは少々後味が悪いし残念ですね。

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