フランス版ミュージカル映画
「ロシュフォールの恋人たち」はいろいろな意味で懐かしい映画ですね。
ジャック・ドゥミ監督が名作「シェルブールの雨傘」に次いで発表したミュージカル映画だということ。ミシェル・ルグランの音楽があまりにも素晴らしかったこと……。カトリーヌ・ドヌーブが前作に引き続き主役を務めていたこと。ドヌーブの実のお姉さんフランソワーズ・ドルレアックと共演して息の合った演技をみせていたこと……。そのドルレアックが本作を最後に帰らぬ人になってしまったこと……。往年のミュージカルの大スター、ジーン・ケリーが元気な姿を見せていたこと……。ウエストサイド物語で私たちの心を奪ったジョージ・チャキリスが相変わらず華麗なダンスを見せてくれたこと……。
ちょっと想い出すだけでも様々なエピソードや情景が甦ってきます。
映画のセットもお洒落でムードも雰囲気もあり、映像も色彩豊か。フランス版のミュージカル映画がハリウッドのミュージカル映画とは一味も二味も違うことを痛感させられた作品でした。
映画史に残るミシェル・ルグランの音楽
それにしても素晴らしいのはミシェル・ルグランの音楽でしょう!
前作「シェルブールの雨傘」ではオペラのように全編セリフに至るまでメロディで埋め尽くし、その美しい音楽にため息が出たものです…。「ロシュフォールの恋人たち」でもルグランの音楽は快調で、様々な登場人物の性格を描き出すのに絶大な貢献をしています。
スタイリッシュなリズムの祭典であったり、エレガントな雰囲気を醸し出したり、デリケートな情感を表出したり……。 音楽に理屈っぽさはなく、無理なく身体の中にしみこんでいく感じなのです。それもそのはず、彼はジャズ、クラシック、ポップス、マンボ、ボサノヴァ等の様々なジャンルの音楽を実に巧みに融合しつつ、それをルグラン流の卓抜なセンスで結晶化させているのです!
映画のサントラというと普通はメインテーマに趣向を凝らして、あとは数曲がとりあえず魅力的かな⁇という場合が多いのですが、このアルバムはまったく違います。全曲を聴き通していただければお分かりいただけるのですが、いわゆる凡作がまったくありません。練りに練られた完成度の高いナンバーが勢揃いなのです。どれもパワフルなバイタリティに溢れていてキラキラ輝いているし、思わず曲に引き込まれるような魅力に満ちています。
仮に映画を見ていなかったとしても、映画のシーンが浮かんでこなかったとしてもこのアルバムは純粋な音楽アルバムとして聴く価値が充分にあると言っていいでしょう! サントラ盤として、アルバム全体としての出来ばえは「シェルブール」以上かもしれませんし、おそらく今後も映画音楽史に輝く永遠の名盤として語り継がれていくのかもしれません。
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