ショパンの最高傑作のひとつ
前回取りあげたバラード第1番は美しく哀愁に満ちたメロディと華麗な技法が印象的な作品でしたが、今回の第4番は精神的な深化とでも言ったらいいのでしょうか……心のゆとりや諦観が曲全体に流れているのです。第4番はある意味、ショパンの音楽の粋といってもよく、ここにショパンのすべてがあると言っても決して過言ではないでしょう。
なごやかに開始される序奏はゆとりと安らぎに満ちており、平和な雰囲気を伝えてくれます。しかし、それに続く第1主題は何とも言えない気だるい旋律を切々と奏でていきます。望郷の想いや哀惜の情が入り交じったような独特の雰囲気が何とも言えません…。第1番の第1主題、第2主題に比べると心をすぐにとらえるようなハッとする魅力には乏しいけれど、その代わり何度聴いても飽きない不思議な生命力に満ちたメロディだと思います。
この主題は曲が進行するにつれて内声部を充実させたり、カノンに形を変えたり…と様々な形に発展しながら無限の表情を見せてくれるのです。改めて、孤高の詩人ショパンの天才的なインスピレーションと才能にため息が出る作品ですね…。
タイプの異なる名演
バラード第4番はサンソン・フランソワのピアノ(EMI)が即興的な閃きや研ぎ澄ますされた感性で曲の本質を描いてくれます。作品に深く没入し、まさにピアノの詩人と化して様々な表情や音楽の心を伝えてくれます!
ルービンシュタインのピアノ(RCA)は相変わらず、くっきりとしたタッチと清澄な音質で魅了してくれます。何よりも安定した造形と作品への深い理解が音楽の本質を引き出していると言っていいかもしれません。バラード第4番をこれから聴きたい方にとって、おそらく最高の1枚となるでしょう。
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