この人の絵を見るたびに卓越した情景描写の持ち主だなあと感心してしまいます……。絵の描法そのものにはまったく無理がないのですが、細かな空気感、光の柔らかさ、波の穏やかさ、空の厚み等々、口ではなかなか説明できない見たままの感動や写真では伝わらない臨場感が見事に伝わってくるのですね!人間の目や心に伝わる情報量というものをマルケは熟知していたのでしょう。マルケ独特の感性のフィルターを通して取捨選択された線やフォルム、色彩が実に説得力があるし潔いです…。
この「ナポリ湾」も初期の素晴らしい作品のひとつと言っていいでしょう。1909年にイタリアのナポリを旅したときの連作かと思われるのですが、生き生きとした波のタッチや空や雲の表情、省略された人々の姿がこの光を浴びたナポリ湾の一瞬の情景を静かに感動的に伝えてくるのです。
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