2012年3月6日火曜日

アルベール・マルケ 「夏のルーブル河岸」


Quai du Louvre, Summer(1906)


 この人の絵を見るといつもホッとします。そして無性にうれしくなってくるんですね!なぜなのかはよくわからないのですが、やはり的確な描写力に裏付けられた詩情豊かな感性が溢れているからなのでしょう。

 マルケは川辺や海岸を愛し、自宅近郊のパリの風景も日常的に描いていたようです。マルケはこのような何の変哲もない慣れ親しんだ光景をとても気にいっていたのでしょう。見慣れた光景ゆえの愛着感もひしひしと伝わってきますし、感動や生への喜びが絵にストレートに表れている感じです。この絵を見続けていると忘れていたものに出会ったようなうれしさと懐かしく愛おしい想いが溢れてきます。

 薄紫やグレーといった中間色の絶妙なハーモニーが素晴らしく、余計な説明を排除したシンプルな形が夕陽を浴びる街並みの美しい表情を引き立たせています。その場の平和でのどかな空気感や柔らかい光が穏やかな色彩によって実に臨場感豊かに表現されていることに驚かされます。
 そして何よりも変に説明的であったり写実的でないのがいいですね。マルケの心のフィルターを通して描かれた世界が不思議なくらい郷愁を奏で絵を魅力的にしているだと思います!いい意味での飾り気のなさとさりげなさがとても洒落た雰囲気を醸し出しているように思います!

 こういう自然で飾らない絵は意外に少ないので、貴重なタイプの画家なのかもしれません。いつか日本でも何らかの形で個展が実現されればいいのですが…。




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