2011年10月25日火曜日

モーツァルト オペラ「魔笛」



Mozart: Die Zauberflote / Christie, Les Arts Florissants







いつも思うのですが、モーツァルトのオペラはことごとく序曲が良く書けています。「フィガロの結婚」然り、「ドン・ジョバンニ」然り、「コシファントウッテ」、「イドメネオ」、「皇帝ティートの慈悲」、どれもこれも充実した素晴らしい序曲ばかりです。独立した管弦楽曲としても充分に歴史に残る傑作揃いと言ってもいいでしょう!
しかも、モーツァルトの序曲はそれぞれの作品の性格や全体像が見事に集約されているので、すんなりと音楽劇に入っていきやすいのです!

 そんなモーツァルトのオペラの中で最も楽しく、親しみやすく、かつ味わい深い作品と言えば、「魔笛」があげられるのではないでしょうか。
 ちなみに「魔笛」の序曲は特に良く書けており、立派な体裁を持っているのですが、神秘的で透明感が漂い、しかも陰影に富んでいるのです。

魔笛は決してストーリーの展開を追うべきオペラではありません。ザラストロと夜の女王の善と悪が逆転したり、腑に落ちないラストを迎えたりと、真剣に話の展開を追っていくと間違いなく消化不良になってしまいます!ストーリーとしては支離滅裂と言ってもいいかもしれません。
モーツァルトはハチャメチャな脚本にハチャメチャな音楽を付けたのではと思われるかもしれません。しかし、決してそんなことはありません。彼の創作の姿勢、軸は実はまったくぶれていないのです!
ストーリー展開はハチャメチャでも、モーツァルトが作曲した音楽はキラキラとした音楽的な輝きやメルヘン的な要素を持ち、光と闇を暗示させる神秘的な要素を持つ等、不滅の光を放っているのです。


通常、オペラには様々な性格の登場人物がいて、様々な人生模様を描いていきます。その中で、非常に雄弁かつユニークでありながら本質的な人物像を描いて秀逸なのがモーツァルトのオペラなのです。

極端に言うと、「魔笛」はパパゲーノとパミーノ、夜の女王、この3人の配役がしっかりしていれば、演奏は半分以上は成功したも同然なのですが、逆にこの3人の表現に問題があれば上演自体がめちゃくちゃになってしまう可能性も大なのです。
それくらいこの3人の配役は「魔笛」の良し悪しを左右する絶対的な魅力を持ったキャラクターなのです!

つまり「魔笛」は「フィガロ」、「ドン・ジョバンニ」同様、さまざまな性格の人間像がユニークに描かれていて、とても面白く、演奏が良ければなお感動的な上演が可能ということになるでしょう!

「魔笛」の登場人物をざっとあげると次のようになるでしょう。タミーノはいわゆる最も常識人タイプのキャストでしょう。地位があるので、それは捨てられず、けれども人助けは人目があるのでやるというタイプなのです。

ザラストロは夜の女王の娘、パミーノを奪った張本人なのですが、なぜか劇中では人徳のある高僧として描かれていきます。ザラストロのメロディはそのような性格上、本音を表には出さず、終始修行や戒律を説くため、なだらかな音楽が滔々と流れていくのです。

それに対し、夜の女王は非常に刺激的です。憎しみに狂い、嘆き悲しんだり、とても激しく感情を爆発させます。しかし反面、愛情深く一途に我が子を想うところは共感できる何かがあるのです。オペラ史上、最もソプラノ泣かせの難曲が夜の女王のそれぞれのアリアではないでしょうか!次々に人間技を超えた高音階と音階の上下が感情込めてストレートに展開されます。 

鳥刺しのパパゲーノは天然の自由人で、何も考えていないようでありながら、お金や物に対する執着心がなく純粋で人間らしい一面を持っているのです。おそらく、モーツァルト自身のキャラクターに一番近いのがこのパパゲーノなのでしょう。

 このオペラのベストパフォーマンスはウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサンとローザ・マニヨン, ナタリー・デセイ, ハンス=ペーター・ブロホヴィッツ, アントン・シャリンガー, ラインハルト・ハーゲン、その他の歌手による演奏でしょう。最高にしなやかで、音楽性あふれる演奏を繰り広げています。上記3人の歌も実にツボを得てるし、合唱の安定感と精緻さはこれまでに聴けなかったものです。
何と言ってもクリスティの創り出す音楽はほどよい高級感と無垢な味わいが魅力で、ファゴット、クラリネット、ピッコロ等の木管の飾り気がなくメルヘンチックな響きはまさに魔笛の世界そのものです。



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