2011年8月22日月曜日

ロベルト・シューマン オラトリオ「楽園とペリ」作品50






 シューマンは交響曲のような大作よりも、歌曲やピアノソナタのような小曲の作曲に光る才能を持った作曲家でした。ではすべてにおいて大作は苦手だったのかというと、決してそういうわけではありません。交響曲も堂々の4曲を作曲しておりますし、それぞれに魅力に富んだ傑作であることに間違いはありません。

 ただシューマンの場合、ベートーヴェンのように抽象的な楽想や主題に深い意味を持たせることは決して得意ではなかったようです。どちらかと言えば、感性的かつメロディライン重視の作曲法で、典型的なロマン派の作曲家だったのです。そういうこともあり、交響曲以外の大作はあまり耳にすることができません。

 しかし、ここで紹介するオラトリオ「楽園とペリ」はシューマンが作曲人生の全精力を注ぎ込んだといってもいいほどの不朽の傑作であり、力作です。シューマンはこの作品にかなりの自信を持っていたらしく、実際に初演もかなりの反響を呼び大成功だったようです。曲調はバッハやシュッツのオラトリオのように禁欲的な宗教的情緒をベースにしたものではなく、ヘンデルやハイドンのオラトリオのような人間感情を生き生きと表現しながら、ドラマティックに盛り上げていくスタイルにやや近い感じがします。

 内容は罪を犯し楽園を追放された妖精ペリが、さまざまな試練を乗り越えて再び楽園に戻る物語です。これは旧約聖書の創世記でアダムとエヴァが神に反逆し、楽園を追われるという内容がそっくりあてはまります。けれども「楽園とペリ」では追放された悲しみと失意で終わるのではなく、また慕わしい楽園に帰るという結末が待っているのです。これは神の愛の深さを表しており、また放蕩息子のたとえにも似た感動的な話です!

  作品は合唱や管弦楽のテクニック的な難しさや、全体を有機的なつながりを持って演奏することの難しさもあって、現在はそれほど演奏されません。日本においては、この作品自体あまり認知されてこなかったのではないでしょうか? 聴きどころは沢山ありますが、特に素晴らしいのは第1部です。「天の心を満たすその贈り物はどこで見つけよう?」と途方に暮れ、もがき苦しむシーンの密度の濃さは尋常ではありません。合唱と金管楽器がからみながら、緊張感を持続させつつ最高のバランスで曲を盛り上げるフーガは迫力満点です。また、この部分はほとばしるような情熱が渦巻き、次々と人物像や意思の力が雄弁に描かれていきます。

 全体は3部構成で約2時間弱の作品ですが、長くは感じられません!合唱やオラトリオ好きの人は、是非一度聴いてみられることをお勧めしたいと思います。決して難解な曲ではないし、合唱の持つ幅広い表現力を感じられるでしょうし、オラトリオの入門曲としてもその魅力を随所に発見できる格好の曲かもしれません。

 この作品には素晴らしいCDがあります。シノーポリ指揮シュターツカペレ・ドレスデンおよびドレスデン国立歌劇場合唱団による1993年の録音です。オーケストラのしなやかで潤いのある響き、曇りがなくクリアなサウンドはそれだけでもこの作品を充分に楽しませてくれます!合唱も気迫がみなぎり、素晴らしいハーモニーが最後まで途切れることがありません。また、フォークナー、マーフィーらソプラノを始めとする歌手の声量と表現力の完成度の高さに驚かされます!そして何よりもシノーポリの統率力の高さと表現力に舌を巻くことでしょう!

 このCDは現在タワーレコード・ヴィンテージコレクションブリリアントレーベルから2種類出ています。どちらもコストパフォーマンスに大変優れていますが、日本語訳を見たいのであれば、タワーレコード盤に限ります。




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