国立西洋美術館の常設展の絵を紹介してまいりましたが、今回は松方コレクションの絵ではあるけれども、常設扱いではない(企画展の折に展示される)絵を紹介したいと思います。
5月の水彩画展でポール・シニャックの水彩画が展示されていました。シニャックの油絵は点描画で、非常に効果を狙った面白い作風だと思うのですが、この水彩画もまたなかなか面白い絵です。
特に様式化された線と白いスペースをうまく利用した光と空気の表現が絶妙です。線や色彩のハーモニーも面白いですね!この絵を見ると、思わず自分も絵を描いてみたいと思わせる新鮮さがあるのです。水彩画を描いたことのある方ならご存知だと思いますが、さらりとしたしつこくない味わいこそが水彩の魅力だと思います。けれども、あまりにもあっさりしすぎると薄味のつまらない絵になる可能性が多分にあるのです。
そこへいくと、このシニャックの絵はしっかりと自分の世界を構築しながら、爽やかな空間をつくっているのです。鉛筆のタッチも自由に描かれていますが、よく見ると雲やわずかに波立っている水の表情等に細かな性格付けがなされていることに気づかされます。このあたりがシニャックの芸の細かさでしょうか。
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