先日、上野の国立西洋美術館に行ってきました。私は学生時代に疲れるとよくここにやってきて絵を眺めながら時間を過ごしたものです。またそれが最高の気分転換になったりしたものでした。
上野公園内という土地柄か、変に気取らず、わりと自由な雰囲気でありながら、それでいて文化の香りが漂う雰囲気が大好きだったのだと思います。最近は町おこしという名目で、突然美術館や博物館が建設されたりしますが、正直、よそよそしく場にそぐわないことが大半です。もちろん、上野の西洋美術館は何の違和感無く自然に街に溶け込んでいることは言うまでもありません。やはり歴史と伝統のなせる技かなと痛感いたします。 特に常設展の絵は思い出深く、ミレーの「ダフニスとクロエ」やクールベの「波」等はお気に入りで、事あるごとにポストカードを購入したのも懐かしい思い出されます。
前置きが長くなってしまいましたが、今回観て改めて気になった常設展の絵画を改めてご紹介したいと思います。
第1回 マルケ 「レ・サーブル・ドロンヌ」
アルベール・マルケ(Albert Marquet, 1875~1947)
一見、「ヘタウマ」に見えるその画風……。これなら私でも簡単に描けそう♪!と思わず感じてしまうほど、とにかく、ラフスケッチをもっと簡単にしたようなタッチとあっさりとした色使いは妙に素人の私たちに安心感と親近感を与えてくれたりします。
しかし、よく見るとマルケはただ者でないことが次第にわかってきます。まず、さらりと流したようなその画風の味のあること……。この海の絵も波の動きや人物の描写にこだわりを捨て、無駄を一掃した潔さが伝わってきます。結果、出しゃばったり、大袈裟な演出はないものの、この海の絵からさりげない詩情がじわじわとにじんでくるのです。前方に寄せる波からも静かな動きや音が心地よい風を伴って癒しの世界をつくりあげているではありませんか!
マルケはフォービズム(野獣派)の画家だったという声がありますが、この絵を見ていると流派は何であれ、「絵が良ければ何の問題も無いんじゃないの」と思えてくるから不思議です。
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