2017年1月3日火曜日

ブリューゲル『バベルの塔』







開けましておめでとうございます。
皆様、昨年は私のブログにアクセスしていただき有り難うございました。今年は皆様に出来る限り、有益な情報をお届け出来るように頑張っていきたいと思います。
何卒よろしくお願いいたします!




絵を見る楽しさや驚き、発見を
無尽蔵に与えてくれる画家

 ブリューゲルの絵は現存する作品の数が少なく、展覧会を開催すること自体が困難だとよく言われています。
 しかし、残された絵の充実度は格別で、絵を見る楽しさや驚き、発見を無尽蔵に与えてくれる画家の一人ではないでしょうか!

 絵が私たちの心に眠っているイマジネーションや好奇心を呼び起こすものであるとするならば、ブリューゲルこそはそれに最もふさわしい画家だといえるでしょう。

 さて、「バベルの塔」はスケールの大きいテーマを扱っていますが、原寸は意外にも小さい絵です。しかし、ここに込められている絵画的な魅力は尽きることがありません。

 豆粒のような大きさの人間に対して、空に届くような勢いで建設が進む塔の威容! この両極端なシチュエーションはとてつもない驚きと不思議な感覚を見る者に与えるのです!ここでは両極端な要素を緻密に配置することにより、一層の効果をあげてますね。なんとも心憎い演出です……。
 その演出の見事さは知らず知らずのうちに追体験のごとく絵の中に身を置いている自分自身を発見することで気づかされるのです。
対照的なテーマは見るものを興奮のるつぼに引き込まずにはおかないでしょう。


丹念に描かれた
ディテールの見事さ

 そして忘れてはならないのが、丹念に描かれたディテールの見事さでしょう!
 特に豆粒のように点在する人間たちの様々な生態を描いたドラマの部分にはほとほと驚かされます。ブリューゲルはこういった些細なところも一切手を抜くことがありませんね。それによって驚くようなリアリティとドラマが生まれるのです。

 また情報量の尋常でない多さにも驚かされます。塔を建設するにあたってそこに払われたであろう血や涙、苦闘といったものがこの一枚の絵から脈々と伝わってくるではありませんか……。 背景の澄み切った空や遠くに見える港に停泊する物々しい船舶の雰囲気も塔の威容と存在感を更に引き立てているのです。

 2017年4月に東京都美術館で『ボイマンス美術館所蔵ブリューゲル「バベルの塔」展』と題して、このバベルの塔が24年ぶりに日本で公開されることとなりました。これは絶対に見逃せない展覧会となることでしょう…。

2016年12月19日月曜日

革命的音楽体験・Spotify








ついに日本でサービス開始
驚きの音楽配信サービス「Spotify」

 今、音楽配信サービスのSpotify(スポティファイ)がとても話題になっています!
 ともかくSpotifyはアプリをダウンロードさえすれば、アルバム1枚をまるまるお手持ちのスマホや端末で無料で聴けてしまうという凄さなのです。これまでアルバムを聴いてみたいと思っても、ショップやオンラインショップで全曲試聴サービスがあるわけではないし、買うのに躊躇していた方には大変な朗報かもしれません!
 今後、Spotifyで聴いて、本当に気に入ったアルバムはプレミアム会員に登録してダウンロードするという公式が出来るかもしれませんし、とても有り難いといえば有り難いサービスですね。

 かつてアップルのitunes musicやamazonのミュージックストアが出現したときは、「手軽で便利、これは凄い!」と思ったものです。でもSpotify旗揚げと同時に今後は同様の音楽配信サービスの事業展開はどうなっていくのか?と考えてしまいます(余計な心配かもしれませんが……)。いや、それ以上に心配なのはアーティストや音楽関係者の収益、CD、レコードショップの経営のほうですね。これから本当にどうなってしまうのでしょう……。

 私はCDショップに大変お世話になってきました。CDを買うだけではなく、いろいろなCDジャケットを眺めたり、新譜を試聴したり、どっぷりと音楽的な余韻や空間に浸ることがいい意味で気分転換になるのです……。

 しかし現在、地方だけではなく首都圏や都心の大型店舗も年々減ってきていることは間違いありません。それはCDが売れないという明白な事実があり、それに伴うCD制作会社の企画・販売も頭打ち状態になり、結局は音楽ソフトの内容も貧弱にならざるを得ないという皮肉な結果を生み出すことになっているのです。


今後はSpotifyのキーワード検索に
新しい音楽の喜びが見いだせるかも

  いつも思うのですが、私たちは便利さ、快適さを手に入れると同時に、とても大事なものを失い続けているように思えて仕方ないのです。便利になると確かに手間はかからなくなるし、時間の節約にもなる……、一見いいところばかりのように思われますが、決してそうとはいいきれません。

 なぜなら、「手間をかけるということ」や「心のゆとり、心の余暇を持つこと」は人間の精神衛生上、絶対必要なことだからです。これが実は気持ちを整理し、リセットする上ではとても重要なことなのです。忙しい今の時代に一見無駄なことのようですけれども、私にとってCDショップでのひとときというのは、明らかに気持ちを切り替え、心の充電をするのに一役買っていたのです。今後この失われた感覚はどのように補充していけばいいのでしょうか……。

 とは言うものの、Spotifyの提供するサービスは魅力いっぱいです! たとえばクラシック音楽ファンであれば、検索で「バッハ ミサ曲ロ短調」と入れたとすれば、それに相当するアルバム候補が続々と表示され、次々に聴き比べることが出来ます。お気に入りのアーティストの作品をドンドン表示させていくことも、マイリストを作成して後で聴くこともできます。

 つまり音楽ファンにとっては無限の音楽鑑賞スタイルと楽しみを提供してくれる驚くべきサービスと言えるでしょう。私ももう少し聴いて気に入ったらプレミアム会員に登録するのも時間の問題かもしれません……。


2016年12月12日月曜日

ベラスケス『鏡のヴィーナス』









ラスケスが描く
唯一の裸婦像

 17世紀スペインの大画家ベラスケスといえば王女をはじめとする典雅で格調高い肖像画で有名ですが、同時に泣く子も黙るほどの圧倒的画力の持ち主としても有名ですね。さらに傑作の誉れ高く、謎の絵としても名高い「ラス・メニーナス」の例のように、様々な細工を施した画家としても有名です。
 今回ご紹介する「鏡のヴィーナス」はベラスケスにとって、おそらく唯一ともいえる裸婦をモチーフにした絵ではないでしょうか。当時のスペインはカトリックの教義的な締め付けが厳しく、画家がヌードを描くことはすぐさま非難の対象になり、容易なことではなかったようです。


素晴らしい演出と
格調高さ

 しかし、この絵は裸婦を描く上で充分な資質と必然性を備えているのです。
 たとえば裸婦の顔を直接描かないで、キュービットが持つ鏡に裸婦の表情を浮かびあがらせていることです。本当にうまい演出ですね……。これによって世俗的で生々しい雰囲気が緩和され、代わりに幻想的で甘美な雰囲気が醸し出されることになったのです。
 その魅力を大きく引き出しているのは、ヴィーナスの身体の曲線の美しさや透明感あふれる肌の輝きであることは言うまでもないでしょう。
 また、キュービットの愛らしい姿態と表情も大変魅力的です。キュービットが膝を曲げて鏡を持つ様子はとても意地らしく、微笑ましい空間を生み出しているのです。
それにしても裸婦を描いても、いささかも品位と格調を落とさず描き切るベラスケスのの表現力はさすがというしかないですね!

2016年12月4日日曜日

ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて-












ブリューゲルの『バベルの塔』
日本で24年ぶりの公開

 これは楽しみな展覧会です!
 何と言ってもブリューゲルの『バベルの塔』が見られるのがいいですね。
 
 バベルの塔は言うまでもなく彼自身の作、『雪中の狩人』と並ぶ大傑作です。スケール雄大で、細部にも様々な趣向が凝らされていて、絵を見る楽しさやワクワク感を限りなく伝える数少ない作品の一つではないかと思っています。

 そのブリューゲルが絵を組み立てる上で多大な影響を受けたといわれるヒエロニムス・ボス。ボスの絵は怪奇的な部分と人間の五感を刺激してやまない独特の魅力がありますね……。今なお根強い人気があるというのも何となくわかるような気がします。
 また、この展覧会ではCGを使ってバベルの塔の創作の秘密と魅力を解き明かすのだとか……。ちょっと楽しみではあります。





【開催概要
ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展
16世紀ネーデルラントの至宝 ― ボスを超えて ―
会期:2017年4月18日(火)~7月2日(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
住所:東京都台東区上野公園8-36
時間:9:30~17:30
  ※金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)。
  休室日:月曜日
  ※ただし5月1日(月)は開室。
価格:一般 1,600(1,400)円、大学生・専門学校生 1,300(1,100)円、高校生 800(600)円、65歳以上 1,000(800)円
※()内は前売券・20名以上の団体券。
※前売券は2017年1月11日(水)~4月17日(月)で販売。
※中学生以下は無料。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳持参者と付き添い(1名まで)は無料。
※4/19(水)、5/17(水)、6/21(水)はシルバーデーにより65歳以上無料。
※毎月第3土・翌日曜日は家族ふれあいの日とし、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は一般当日料金の半額(いずれも証明できるもの提示)。
巡回情報 大阪会場
会期:2017年7月18日(火)~10月15日(日)
会場:国立国際美術館
住所:大阪府大阪市北区中之島4-2-55

2016年11月26日土曜日

小津安二郎「秋刀魚の味」













古くて新しい
小津作品の真骨頂

 私にとって小津安二郎監督の映画はとても相性がいいようです。
 遺作となった「秋刀魚の味」(1962年)は妻を亡くした父が、よく出来た娘をお嫁に嫁がせるまでの日々を描いた映画です。極端に言えば、日常のありふれたやりとりだけを描いた映画ですが、まったく退屈に感じません。むしろ心地よい疲れさえ感じるのはなぜなのでしょうか……。 すでに50数年前の映画ですが、小津監督の映画を見ていると何気ないあたりまえのシーンにも大切な人生の側面が浮き彫りにされているような気がするのです。

 この映画で交わされる会話はほとんど他愛のない内容です。しかし、そこには家族間の言うに言えない奥ゆかしい感情が漂っていますし、人として生きることの辛さや切なさが暖かな眼差しとともに伝わってくるのです。
 小津監督の美学はこの映画でも冴えに冴え渡っています。たとえば、カメラのポジションを変えないでローアングルで撮り続けるのもその一つでしょう。その他、無駄な動きを極力取り除いたり、俳優の視線、セリフの口調、調度品の色調の統一を試みたのも徹底した演出のこだわりからくるものなのでしょう。

 動きが少なく、セリフは棒読みのようで、時に物足りなさを感じるほどなのですが、かえってそのことが見る者に多くのことを考えさせるゆとりを与えてくれるのです。このようなシーンの演出も小津監督が名匠と言われるゆえんなのかもしれません…。



気心を知り尽くした
俳優たちとの呼吸

 私はこの映画を見て、なんだかとても胸が締めつけられるような気がいたしました。
 特に印象的なのは娘(岩下志麻)を嫁がせる日の父親(笠置衆)の表情です。心にぽっかり穴が空いたような感覚が伝わってくるシーンですね……。娘の幸福を考えればうれしいはずなのに、それが素直に喜べない父親の戸惑いや寂しさ……、そのような複雑な心境が絶妙に描かれているのです。


 花嫁衣装を身に纏った娘が畳に手を突いて「今までいろいろとお世話に……」と言いかけた瞬間、父が「ああ わかってる わかってる しっかりおやり…幸せにな」と言葉をさえぎる場面があります。
 ぶっきらぼうな表現なのですが、おそらく父にとってこれ以上のはなむけの言葉はなかったのでしょう…。おそらく、「家族なんだからそんな堅苦しい挨拶はいいよ」とか、あるいは「娘を送り出すってこんなに寂しいものだったのか…」のような入り混じった思いが心の中で交錯していたのかもしれません。


 小津監督は俳優たちに常々、「余計な個性を出してほしくない」と伝えていたようですね。彼の映画の常連キャストだった原節子や笠置衆も納得がいくまで何度も撮り直させられたようです。 小津監督は笠置衆に「あんたの演技が見たいんじゃない。とにかく言われたとおりにやってくれ」と口を酸っぱくして言っていたようです。

 「だったら役者は誰でもいいんじゃないの?」と思われるかもしれません。
 でもそうではなかったのです……。小津監督が願ったのは演技をしなくても確かな存在感と気品をスクリーン上に漂わせる役者の存在だったのです。小津組と言われ、毎回同じ役者さんで撮影に臨むことが多かったのも、彼らに全幅の信頼を置いてのことだったのでしょう。


 平凡な日常に横たわる孤独と寂寥感。時には能楽や小気味よいリズムの演劇の舞台を見ているような錯覚にとらわれる小津監督の独特の映画の世界。それは日本的情緒と哀愁を絡ませつつ、日本の伝統美とモダンアートのような斬新な美を両側面で魅せてくれる唯一無二の世界なのかもしれません……。

2016年11月18日金曜日

セザンヌ「リンゴとオレンジ」








静物画に新風を吹き込んだ
セザンヌ 

 セザンヌの絵のファンは多いと言われています。
 確かにセザンヌの絵を見ていると、「こんな物の見方もあったのか」とか、「こういう描き方もあったのか」と、いい意味で創造性を刺激されますし、新鮮な驚きがあります!
 たとえば、遠近法は昔から絵を描く上で絶対に外せない技法として重要視されてきました。しかしセザンヌは自身の絵でこれをあっさりと外してみせたのです。もちろん、気まぐれで外したのではなく、苦悩と葛藤の末に行き着いた表現だったのですが……。
 「リンゴとオレンジ」、これは数多いセザンヌの静物画の中でも特に有名で、最高傑作と称されることもしばしばです。何より絵の気品の高さと物のしっかりとした存在感が際立っていますね!
 この絵の主役はタイトル通り、リンゴとオレンジです。その他のモチーフは花瓶であろうと布であろうと、すべてはリンゴとオレンジを引き立てるための材料であり脇役にすぎないのです。


リンゴとオレンジの
並々ならぬ存在感

 特にリンゴやオレンジの量感や密度の濃さは半端でありません。しかも豊かな色彩からは芳醇でみずみずしい果実のイメージさえ伝わってくるのです!
 それは幾重にも積み重ねられた絵の具のマチエールによるところが大きいでしょうし、目で見た形よりも肌で実感した体験や感動を大切にしていることもあげられるでしょう。 セザンヌはリンゴやオレンジを1個ずつ、やみくもに描いているのではありません。積まれたリンゴやオレンジを一つの集合体としてとらえ、それぞれの関係性や多面的な表情を描くことによって、より果物の存在感を強固なものにしているのです! 

 丹念に着色されたカラーバリエーションの幅の広さも大きな魅力となっているのは間違いありません。
 先ほど遠近法の問題をあげましたが、果物が置かれたテーブルと背景との距離感がほとんどないことにお気づきでしょうか?
 おそらく、セザンヌは立体的な空間の中に巧みに平面的で装飾風の表現を加えることによって、リンゴとオレンジを強く印象づけようとしたのでしょう。

 それにしても、この絵は何回見ても飽きることがありません。おそらく普遍的な眼で物を見たり、色彩や形を突き詰めることによって絵を再創造しようとする画家の眼差しに共感を覚えるからなのでしょう……。

2016年11月13日日曜日

エルガー「エニグマ変奏曲」











友人たちの人柄を
愛情豊かに表現した音楽

 クラシック音楽を聴き始めたばかりの人にとって驚きの一つにあげられるのが、交響曲や協奏曲の一楽章あたりのトンデモナイ時間の長さです。しかも退屈せずに最後まで聴き通すのは、よほど気に入った場合でない限り至難の業なのではないでしょうか。しかし、だからといって難しい音楽ばかりなのではありません……。 

 中でも、エルガーの「エニグマ変奏曲」はポピュラー音楽を聴くような感じで接しても充分に楽しいですし、まったく違和感はないでしょう。しかも形式が変奏曲ですから、CDで聴く場合、トラックが変奏曲ごとに分かれていて(つまり自分の聴きたい変奏曲をワンタッチで選んで聴ける)とても聴きやすいのです!

 何より素晴らしいのは変奏曲の一曲一曲が気が利いていることと、エルガーらしい端正なリリシズムが全開していることです。管弦楽による変奏曲としてはブラームスの名曲「ハイドンの主題による変奏曲」に匹敵する魅力的な作品と言えるでしょう。
 全体を通して聴くと約30分ほどの音楽なのですが、特筆すべきは、エルガーが変奏曲のテーマとして友人たちの人柄を「気の許せるいいやつ」、「懐かしい友の思い出」……、といった感じで愛情豊かに表現していることです。これはラヴェルが『クープランの墓』で第一次大戦で亡くなった友人たちに哀悼の意を込めて作曲したケースに似ていなくもありません。
 
 その友人たちの描き方もなかなかユニークですね! 全体の基本テーマになっている第1変奏(妻アイリスを描いた)や集大成の第14変奏・終曲をはじめとして、友人たちの実像を想わせる魅力的な主題や旋律が続々と現れます。
 たとえば第6変奏は、のどかで微笑ましいテーマが何ともいえない懐かしい雰囲気を醸し出してくれたりします。
 軽快なリズムとユーモアが冴える第7変奏、慕わしさと大らかさが滲み出ているような第8変奏と、どれもこれも生き生きとした個性が伝わってくるのです!


心の友、イェーガーへの感謝と敬意
第9変奏「ニムロッド」

 短くてチャーミングな変奏曲の中で、第9変奏のニムロッドだけは静寂に満ちた祈りや崇高なテーマによる賛歌が印象的で、「エニグマ変奏曲」の文字通りの精神的な支柱といえるでしょう。ここだけは敬虔なイメージが強く、別の音楽のように聴こえます。
 英国ではニムロッドが国民の心情に寄り添う音楽としてとらえられているようで、重要な式典ではたびたび使用されますね……。たとえば、2012年のロンドンオリンピックの開会式もその好例でしょう。

 このような音楽に発展したのはエルガーの精神的苦痛や窮地を救い、音楽に少なからず影響を与えた親友(イェーガー、編集者、評論家)の存在が大きかったようです。イェーガーは唯一無二の心の友だったのかもしれません。
 フィナーレの第14変奏は、妻アイリスやあらゆる友への尊敬と感謝の想いを綴った集大成の音楽で、ここにエルガーの最良の音楽的特質と魅力が集約されているといってもいいでしょう! 

モントゥーの
押しも押されぬ名盤

 演奏は古くはなりましたが、ピエール・モントゥー指揮ロンドン交響楽団(Decca タワーレコードオリジナル)が押しも押されぬ最高の名盤です。
 この録音を聴くとモントゥーの守備範囲の広さが改めて実感されます。ベートーヴェンやブラームスのようなドイツ古典派やロマン派、ラヴェルやドビュッシーといったお国もの、かと思えばバッハの管弦楽曲やチャイコフスキーの交響曲などにも素晴らしい名演奏を残した本物の巨匠でした。

 この演奏もまったく力んでいないのに、音楽が大きくて包容力があり、聴くものを幸福感で満たしてくれます! 
 切れの良いテンポとリズム、柔軟で豊かな楽器の響き、ユーモアと生真面目さのバランスが絶妙な味わい、どれをとっても最高です。