穏やかな癒やしを与えてくれる
「グローリア」
イタリアバロックの大作曲家ヴィヴァルディといえば膨大な数の作品を残したことで有名ですが、ヴィヴァルディといえば「四季」、「四季」といえばヴィヴァルディというくらいクラシック音楽の人気曲として今や知らない人はいないほどです。しかし、それ以外の作品は一般的にあまり知られていませんし、認知度がぐっと下がってしまいます。
実際は魅力的な作品がたくさんあるのに、埋もれてしまう傾向があるのはちょっと残念なことですね……。
そこで、ヴィヴァルディのおすすめ作品を一つあげてみることにしましょう!
私がおすすめしたいのは宗教音楽「グローリア」です。 決して大作ではありませんが、何度聴いても飽きない素直な語り口が、穏やかな癒やしや心地よいひとときを与えてくれることでしょう。
「グローリア」の良さは、何と言っても親しみやすさではないでしょうか!
つまり宗教音楽にしばしば見られる堅苦しい約束事や、重々しい情念に束縛されることがありませんし、どこまでも明朗快活なのです。音楽はあくまでも楷書風できっちりとしていますし、誰が聴いたとしても見通しの良い作風に魅了されることでしょう。
第3曲のソプラノの二重唱も涼風のような爽やかな余韻を残してくれるし、第7曲の合唱曲「ひとり子である主」(Domine, Fili unigenite)の弾むような喜ばしい情感も聴いていてうれしくなってきます。
最後の合唱曲、聖霊とともに(Cum Sancto Spiritu)は天上から穏やかな陽射しがゆっくりと差し込むような神秘的な情緒を醸し出しつつ曲を閉じていきます。
絶品の演奏
プレストン盤
演奏はサイモン・プレストン指揮エンシェント室内管弦楽団、オックスフォードクライストチャーチ聖歌隊、エマ・カークビー(S)、ジュディス・ネルソン(S)、キャロライン・ワトキンソン(MS)他(Decca)が最高です。まさにこの作品を演奏するために生まれた音楽集団と言えば言いすぎかもしれませんが……、それくらい魅力いっぱいの名演奏です!
この作品を荘厳に盛り上げようとしようとしたり、華々しいフィナーレにしようとしたりすると大抵は失敗してしまいます。そもそも音楽自体がそのような激しい演奏を要求していないのですね。 むしろ引き締まったリズムや造形スタイル、柔らかで透明感のある歌声こそがこの音楽に相応しいのだと思います。
その中でもプレストン盤は絶品で、どこをとっても過不足のない、この音楽の理想とする美しい演奏のひとつなのではないでしょうか。
ソロの透明な歌声や、柔軟性のある管弦楽の音色やリズム、そして無垢で温かい合唱の魅力が他の演奏を大きく引き離しています。中でも大好きな第7曲の合唱、 ひとり子である主(Domine, Fili unigenite)の胸の弾むような喜びと優しさは例えようがなく、この作品の魅力を引き立たせています!
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