豊かな感性と
卓越した造形センス
マルケという人はちょっと見ただけだと何でもないような絵を描いてるようにしか見えないのですが、実は凄い絵を描いているということが見れば見るほど伝わってきます。
何がどんなふうに凄いのかというと、それは人並み外れた感性の豊かさと繊細さがあげられるでしょうし、それを形や色としてあたりまえのように抽出する造形センスや情報量の多さがあげられるでしょう…。
その情報量の種類は写真とは異質の世界ですし、写真からは絶対に得られない世界といっていいかもしれません……。またそこにこそマルケの絵の大きな存在価値があると言ってもいいでしょう。
たとえば今回ご紹介する「ポン=ヌフとサマリテーヌ」では、モチーフとなったパリの街並みの空気感や騒然とした雰囲気が醸し出されることはもちろん、画家の目に映った風景や絶えず呼吸する街並みのようすが生き生きと伝わってくるではありませんか…。
この絵ではマルケの持ち味であるグレートーンの色調がとても美しく、冬の寒々とした風景を魅力的に描き出しています。
なるほど画面全体に冬空の寒さが拡がっているように感じますし、雨混じりの雪が路面を濡らし、帰路を急ぐ人々の様子が次第に浮かび上がってきます……。
単純化したタッチなのですが、日常的な光景の中に強い共感と関心を寄せる画家の眼は鋭く、感性のフィルターが冴え渡っています。決してリアリズムを追究して描いているわけではありませんが、ここには写実を越えた心の記憶や感性に訴える実感があるのです。
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