芳醇な香りを
放つ色彩
ボナールと言えば真っ先に思い出されるのがセンス満点の色彩感覚です。これは彼の絵のすべてに共通するものですが、形や構図のバランス等の一切を抜きにしても、なお魅力的な絵というのはボナールだけかもしれません……。
それほど彼の色彩には他の画家とは一味違う独特の魅力があるのです。透徹していて、甘美で洗練されたムードを漂わせているといったらいいのでしょうか……。おそらく天性のカラリストなのかもしれません。
知的でありながら繊細でかつ感覚的、しかも芳醇な香りを放つ色彩はそれぞれが絵の中で不思議な魅力に満ちています。そしてそれは個性の輝きと相まって、絵の空間で豊かなハーモニーを奏でるのです。
「田園交響曲」でもペールブルーの木々の背景に着色された緑や青紫がとても印象的です! また絵の下半分を占領するベージュの色彩の幅も大変広く、ボナールはその一つ一つの要素にさまざまなニュアンスと情感を吹き込んでいるのです。
それはただの色ではなく、呼吸をするように私たちの五感に無理なく浸透する癒しの形であり、心の扉を開放する優しい戯れでもあるのです。
何よりも洗練された甘美な色彩は観る者の目を釘付けにする特別な効果を持っているといっていいでしょう。そして、極力シンプルで意味深い線と形がますますこの絵に叙情的な魅力を降り注いでいるのです!
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