2015年10月25日日曜日

ヘンデル 主は言われた(ディキシット・ドミヌス) HWV 232













灼熱の太陽の輝きに
似た魅力作

 ヘンデルはイタリア滞在時代の若かりし頃にオペラの名曲を次々と発表しました。宗教曲『主は言われた・ディキシット・ドミヌス』もそのような時に誕生したのでした。
 まず、この作品を聴いて感じるのは従来の厳かな宗教曲のイメージとは少し一線を画しているということです。作品を聴いてもわかるように、大変な意欲作で、これまでのカトリック音楽の慣例を打ち破ろうという気概に満ち満ちています!
 それはいい意味で宗教曲の範疇を超えているということで、エネルギッシュで輝かしい合唱はいつの間にか宗教曲であることも忘れさせてくれます。

 灼熱の太陽の輝きを想わせる楽曲の素晴らしさ!聴くものを飽きさせない変化と音楽的な流れがある作曲技法の冴え……。宗教曲と言えど決して難解ではない親しみ安さ!およそ30分少々の作品ですが、聴き始めると曲のとりこになってしまうことうけあいです。

 しかし、技術的には大変な難曲揃いで、少しでも気を抜くとあっという間に音楽が崩壊しかねない恐い作品です。合唱パートのみならず、オーケストラパートやアリアも含めて極めて強い集中力が要求されます。
 



とことん堪能させてくれる
ミンコフスキの演奏

 この作品、実は今年5月のラフォルジュルネオジャポンの演奏プログラムにも組まれました。それがダニエル・ロイス指揮ローザンヌ室内アンサンブルの演奏です。この演奏で初めて「ヘンデルにディキシット・ドミヌスあり!」と認識された方も少なくなかったのではないでしょうか……!?。 
 それほどダニエル・ロイス指揮ローザンヌ室内アンサンブルの演奏は素晴らしく、この曲がどれほど魅力に溢れているのかを実感させてくれたのでした。
 ロイスの音楽性の高さ、合唱の心が溶け合うような至純なハーモニーの素晴らしさは今も心に深く焼き付いています。ただ一つ残念だったのはソリストたちが若干弱く、アリアの部分では深い感動までには至らなかったことでしょうか……。

 まず音楽が求めている解釈とミンコフスキが目指している演奏がぴったり一致しているのではと思えるほど表現に少しも違和感がなく、聴くうちにドンドン引き込まれていきます!

 想いや主張をストレートに込める合唱や気迫のこもったミンコフスキの表現が凄く、それがまったく上滑りしていないどころに音楽への共感の深さを実感させてくれます。音楽は一気呵成に流れるように繋がっていきますが、とにかく細部まで一切妥協しない充実した音楽づくりやセンスの良さに圧倒されますね。

 ソリストたちの表現も最高です。特にマシスとコジェナーのソプラノデュエットはラフマニノフのヴォカリーズを深化させたような心が洗われるような名唱と言っても過言ではないでしょう。










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