初期のピアノ協奏曲の
傑作K.238
無邪気な微笑みと心の翳りを併せ持つ音楽の天使!
人の心の機微に優しく語りかける詩人……。
モーツァルトは音楽の天才と言われたりしますが、それ以上に私たちの心を捉えて離さない天才ですね!それにしても、モーツァルトの音楽ってどうしてこんなに愛おしいのでしょうか⁉
以前の投稿でモーツァルトのピアノ協奏曲で第20番以前の作品も魅力に溢れていると書きました。初期のピアノ協奏曲の中で傑出しているのが6番K.238です。K.238は音楽的な純度の高さ、モーツァルトらしいメロディとリズム、こぼれ落ちるようなセンスと魅力に溢れているのです!中でも絶品なのが第3楽章ロンド・アレグロでしょう。まさに天使の微笑みとはこのような音楽を言うのではないでしょうか⁉
ロンド・アレグロに何度も登場するホルンはピアノの対旋律に回ったり、意味深いフレーズを吹いたりと実に効果満点です。寛いだ感じで登場するピアノの第一主題もとても親しみやすくていいですね!
口笛を吹きながらスキップするように音楽は軽快に進んでいくのですが、音楽はまったくダレたり退屈になることなく、さまざまなエピソードや余韻を残しながら心に染み込んでくるのです。
第1楽章、第2楽章もくどさや無味乾燥なところが一切なく、自然な陰影がありメロディが少しずつ形を変えながら空気のように聴く人の心にスーッと染み込んでくるのです。ちょっとしたリズムやメロディに込められた繊細なニュアンス、音楽的な味わいは最高で、音楽を聴く喜びにいつのまにか満たされるに違いありません。
バレンボイムの
理想的な名演
ダニエル・バレンボイムはモーツァルトのピアノ協奏曲を重要なレパートリーの一つにしています。やはりここで紹介するベルリンフィルとの録音もピアノ、オーケストラ、録音のすべてが揃った名演奏と言っていいでしょう。バレンボイムは1970年代にもイギリス室内管弦楽団とピアノ協奏曲全集を録音していますが、完成度はやはりベルリンフィルとのものが1枚も2枚も上と言っていいでしょう。
このK.238でのバレンボイムのピアノは実に豊かで深く、モーツァルト特有の純粋無垢な響きも充分に表現されています。第3楽章ロンド・アレグロの自在でメリハリに富んだ表現、音楽の流れを損なわない音楽性はさすがです。
ベルリンフィルの伴奏も豊かで音楽的だし、楽器の響きに奥行きがあります。そのことがK.238でモーツァルトが伝えたかった愉悦や無垢な魂をより一層引き出しているような気がしますね。
前回推薦したペライア=イギリス室内管弦楽団と共に聴き続けたいCDです。
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