2014年1月6日月曜日

ヘンデル 「セメレ」 HWV58





Cantillation  Sirius Ensemble  Antony Walker, conductor






John Eliot Gardiner (Conductor),English Baroque Soloists






 新年明けましておめでとうございます。
 このブログを訪問してくださった皆様。2014年が皆様にとって良い年になりますよう心よりお祈りいたします…。気がつけばあっという間に1月も1周間が経とうとしていますね。相変わらず更新がのんびりペースですけれども、今年も何卒よろしくお願いいたします。
 


オペラなのかオラトリオなのか?


 ギリシャ神話を扱った異色の作品、ヘンデルの「セメレ」は彼が最も油の乗り切った1743年の作品です。ヘンデルは前々年に「メサイア」、前年には「サムソン」と続々オラトリオの傑作を発表していたのでした。いかにこの時代のヘンデルの創作力が凄かったかということを再認識させられますね。
 この作品はギリシャ・テーバイの王カドモスの娘セメレが神々の王ジュピターと密かに愛しあうようになるところから始まります。これを知ったジュピターの妻ジュノーは激しく嫉妬するようになるのでした。結局、ジュノーの策略によりセメレの命はジュピターの閃光で絶たれてしまうというストーリーです。
 ところで、ヘンデルの「セメレ」はオペラなのかオラトリオなのかということで、しばしば論議の的になるようです。

 オラトリオと言えば聖書やキリスト教的なテーマを題材にした演技を伴わない音楽劇を指し、それ以外の演技や舞台装置を伴うドラマチックな音楽劇はオペラとして認識されるということらしいのですが、どうもこの境界線も怪しいものですね。そのためなのか、「セメレ」は演奏会形式による上演とオペラ形式による上演の二通りに分けられるのが一般的です。でも同じ上演をするならば、オペラ形式によるものが面白いのは当然でしょう!
 私としてはオペラだ!オラトリオだ!と目くじらを立ててどうするんだろう…という気もするのですが!? そのような学術的な区分けをするよりも、音楽として芸術として優れた作品であるかどうかということのほうがはるかに重要なのではないでしょうか!  それよりも何よりも「セメレ」の名演奏がもっともっと…たくさん出てきてほしいというのが切なる願いですネ。



バロック音楽史に燦然と輝く傑作

 この「セメレ」は旋律、インスピレーションに満ちた楽想、密度の濃さ、劇的な要素等、どれをとっても傑出した作品です。ちなみに序曲を聴いてみてください。緊張感漲るただならぬ気配にアッと驚かれることでしょう!しかも格調高くどこまでも音楽的な魅力に富んでいるのです。合唱はドラマの重要なポイントとして適材適所に置かれており、作品にメリハリを与えているんですよね。
 特に第2幕最後のセメレとイーノがしみじみと歌うアリアに続いて、ニンフと若者たちが歌い交わす合唱は霧が晴れたような瑞々しさや神々しい響きを実感させてくれます!ドラマを盛り上げる手腕は見事で、忘れ難い印象を残してくれるのです。
 アリアも多彩で充実しています!登場人物の性格の違いを巧みに描き分けるヘンデルの音楽性や有無をも言わせぬ表現力には唖然とさせられます。例えば憎しみと嫉妬に燃えたぎるジュノーの歌、底抜けに明るく素直な情感を醸し出すジュピター、心の想いを切々と綴ったセメレのアリア…。

 こんなに素晴らしい名曲なのに、演奏として無条件で推せる絶対的なCDは今のところありません。曲が素晴らしいだけにちょっと残念ですね……。あえて推薦するなら、アントニー・ウォーカー指揮カンティレーションのオペラ形式によるライブ録音ジョン・エリオット・ガーディナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、モンテヴェルディ合唱団(エラート)の音楽を主体にしたスタジオ録音が挙げられるでしょう。

 ウォーカー盤はライブ録音ゆえの聴きにくさこそありますが、有機的な音のドラマとしての緊迫感や面白さは圧倒的で、通して聴くとこの作品の魅力が生き生きと伝わってくることでしょう。曲の本質を突いたウォーカーの指揮が素晴らしいし、エネルギーに満ちた合唱の素晴らしさも特筆に値します。
 ガーディナー盤は現時点では最もバランスのいい名演奏でしょう。特に序曲の余計なものをすべて剥ぎ取ったような切れ味鋭い響きはこの曲の新たな一面を見せてくれた名演として長く記憶にとどめられるに違いありません。ロルフ・ジョンソンやデラ・ジョーンズの歌は聴き応えがありますし、合唱も例によってキメ細やかで美しいハーモニーが素晴らしく、ドラマティックに盛り上げています。






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