ハイドン演奏の条件を備えたミンコフスキ
先日、マルク・ミンコフスキがハイドン交響曲集を収録した記事をアップさせていただきましたが、詳細にはあまり触れることができませんでした。ですから、今回は追加でミンコフスキのハイドン交響曲集から1曲のみ取り上げさせていただきたいと思います!
曲は交響曲第103番「太鼓連打」です。この曲はハイドン晩年期の傑作なのですが、104番「ロンドン」、101番「軍隊」と比べると地味であまり目立たない存在の作品です。スケール雄大で骨太な造型を持っていることはザロモンセット共通の特徴です。しかも細部の充実度は満点で、ベートーヴェンにはないユーモアとウイットに富み、あらゆる部分が生き生きと訴えかけます。
ミンコフスキのCDでは第1楽章の最初に出てくる太鼓の入魂な演奏に驚かされます!交響曲の部分的なパートだからといって一切遠慮せず、ズシンとお腹の底に伝わるような存在感充分な響きを生み出しているのです。これぞ交響曲の真骨頂と言いたくなるような素晴らしい開始だと思います!!
次いで主部に入ると流れるような旋律のフレージングの心地良さと楽器のみずみずしい響きに心がワクワクしてくるのを感じます。ミンコフスキはさらっと流しているようでも実は心憎いまでにツボを心得ていて、肝心のところでは雄弁に音楽が語りかけてくるように心がけているのです。
第2、第3楽章も第1楽章と同じようにソロの響きが清澄で豊か。次々に現れる主題は様々な形に装いを変えてうれしい驚きをもたらしてくれます。
第4楽章のフィナーレに入るとホルンの晴朗極めた響きに胸の高鳴りを覚えます!そして主部に入ると喜びにあふれた音楽が一気にとどろき渡ります!格調高く最高に洗練された形で聴き手に迫ってくるその音楽はとても幸福なひとときを届けてくれるのです。
ミンコフスキの演奏はハイドンを演奏する上で必要な諸々の条件をすべてといっていいくらい満たしていることに驚かされます!そのひとつはユーモアとウイットに富んだ感性の表現です。それぞれの楽器の響きの持ち味を最大限に生かしたミンコフスキのセンス満点の指揮ぶりにはため息が出ます!二つめは透明感のある響きです。これは楽器のソロの澄んだ響きに如実に現れているといって言いでしょう。
最後に「パパハイドン」の男性的なスケール感と迫力でしょう!オリジナル楽器のハイドン演奏ではこれが著しく欠けている演奏が多かったように思います。しかしミンコフスキの場合は曲に対する共感が強いのか、無意味なフレーズは見当たらなく、あらゆる部分に熱いパッションが渦巻いていることがひしひしと伝わってくるのです!
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