音の風景画家メンデルスゾーンの面目躍如
少しずつ朝晩の気温が下がり始めてきました。皆さん風邪など引かれていないでしょうか?ただ、秋は深まってきているはずなのに日差しの強さだけは相変わらずです。日中は暑くて汗ばむことも珍しくないですよね。通りの街路樹もあまり色づくことなく、「一体今の季節は何!?」と言いたくなってしまうような不思議な感覚にとらわれる昨今です。こんな時だからこそ、心にだけはあふれるような感性や希望の泉を持っていたいものですね……‼
ところでメンデルスゾーンは自然から感じた抒情を大切にする作曲家でした。彼はフィンガルの洞窟序曲やイタリア交響曲等、目に見える情景を扱った作品が多いことは皆さんご存知でしょう。実際に彼自身、絵画の腕前はプロ並みだったようです。特に風景をテーマにした水彩画あたりは詩情豊かで、どこか憂いを帯びたキメの細かい画風が魅力的ですね。
そんなメンデルスゾーンですから、陽光煌くイタリアよりも絶えず曇り空で寂寥感漂うスコットランドの方が彼のインスピレーションを刺激したのでしょう。実際に交響曲第3番「スコットランド」は音の風景画家メンデルスゾーンの面目躍如と言える出来映えで、ロマン派を代表する傑作に仕上がっています。
しかしこれほど美しく哀愁に満ちたメロディを格調高く作りあげる才能は並大抵のものではないでしょう。途中10年余りの中断があったにもかかわらず、この作品が完成にこぎつけられたのはメンデルスゾーンのただならぬこだわりがあったからに違いありません。全4楽章とも変化に富んでいて、さまざまなヴァリエーションの中で生き生きとセンス満点にスコットランドの抒情が奏でられます。
演奏は最近の演奏では残念ながらあまりいいものはありません。マーラーやブルックナーでは最近次々に素晴らしい演奏が現われてきましたが、スコットランド交響曲はなかなかいい録音に巡り会えません。結局はスローテンポで堂々と細部を謳い上げたクレンペラー盤をあげるしかないようです。 でも隅々まで磨き上げられた造形とよく歌われた弦の響き、管楽器の音色はやはり最高です。どんなにロマンティックなメロディでも、スローテンポを守り抜く彼の強いポリシーがこの作品の隠れた魅力を伝えてくれているのでしょう。
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