One Point Review

2012年3月28日水曜日

メンデルスゾーン 無言歌



Mendelssohn: Songs Without Words by Livia Rev




 詩のようなスタイルで心象風景や感情、情緒の描写を表現したピアノ作品がメンデルスゾーンの「無言歌」です。「春の歌」、「狩りの歌」、「ヴェネツイアの舟歌」、「5月のそよ風」等、親しみやすく覚えやすい曲が満載で、どなたも1度はこれらの曲を耳にし、気持ちが和んだことがあるのではないでしょうか? 

 懐かしいメロディ、繊細で優しいフレーズ、気品に満ちた曲調! ピアノ入門者にとって「無言歌」はまさに未来へと続く光の扉のような存在です。
全体は8巻から構成され標題がついた曲が多いのですが、実際はメンデルスゾーンによってつけられたものはわずかなのです。彼は標題によってイメージや表現が枠にはまってしまうことを非常に嫌っていたようです。

 この作品ではベートーヴェンの演奏で効果を発揮するペダルを強く踏む強い意志の表現はあまり必要とされません。それよりも、わずかな四季の変化にも敏感に反応するような繊細な感性が要求されるのです。自分なりの味付けや大胆なデフォルメ、個性的な表現はそぐわないといっていいでしょう。
 何よりも美しいメロディラインに敬意を払いながら原曲に忠実に、みずみずしい感性を信じながら弾くことが曲を魅力的に聴かせるポイントなのです。過剰な表現欲に溺れず、どれだけ新鮮な気持ちで曲に向かっていけるかが「無言歌」を演奏する上での試金石となりそうです。

 この曲の演奏は先に挙げた特徴から自然に旋律線を歌わせつつイマジネーション豊かなピアノ演奏をするハンガリー出身の女流ピアニストのリヴィア・レフ(ハイプリオン)を推したいと思います! とにかく表情が自然で音楽は停滞することなく流れていきます。即興的な味わいも魅力ですが、何より惹かれるのが端正で洗練された造形! メンデルスゾーンの本質をズバリ突いた素晴らしい演奏ではないでしょうか。





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